基板設計図の作成において、今や導入必須となっているCAD。ここでは、まだCADを導入していない企業やソフト変更を検討中の企業に向け、CAD導入のメリットやソフトの選び方、おすすめのソフトなどをご紹介しています。
CADとは、コンピュータを用いた設計支援システムのこと。本来は人の手作業で行うべき設計業務において、可能な範囲でコンピュータが支援するシステムをCADと言います。
今や、設計に関連するほとんどの分野において欠かせない存在となったCAD。機械用、電気用、建築用、土木・測量用、服飾デザイン用、パッケージデザイン用など、様々なタイプのCADが誕生していますが、もちろん基板設計の分野においてもCADは必須のシステムと位置づけられています。
基板設計にCADが導入されたことで、業務の効率化、生産性の向上、ミスの激減、コストの削減等々、現場には計り知れないほどのメリットが生まれました。
基板設計図にCADを導入する主なメリットを具体的に見ていきましょう。
手作業で回路図を作成する場合、複数の担当者同士でのやりとりや部署間での連携が必要となるため、作成の工程において何らかのミスが生じることも少なくありません。
一方で、CADを使用して回路図を作成すると、人の目では見落としがちな小さなミスを瞬時に発見することが可能。ミスが減れば、修理の必要が生じたりクレーム対応したりする頻度も減るため、結果的には経営効率化にもつながります。
電化製品の大半に回路図が搭載されている現状において、手作業で回路図を作成していては生産が追いつきません。
回路図作成のスピード化を実現したCADは、電化製品の生産性向上に大きく貢献しています。
手描きによる回路図に比べ、CADによる回路図は非常に見やすく描かれます。かつ、データ化が容易なので、共有ファイルへの保存や他の担当者へのデータ送信などにより、簡単に回路図データの共有を行うことができます。もちろん、手描きの回路図に比べて紛失リスクも低下します。
CADによって生まれるこれらの小さな利便性の数々は、現場の担当者たちにとっては大きなメリットとなるでしょう。
手作業で作成した回路図が想定通りに動作するかどうかを確認するには、実際に実物を作成したうえで、試してみなければなりません。
一方で、CADで回路図を作成した場合、PC上で動作シミュレーションを行うことができるため、手間も時間もコストも大幅にカットすることができます。
機能シミュレーションをしながら、同時に回路図設計を進めていくことができる点は、手作業の回路図作成にはできない大きなメリットと言えるでしょう。
基板設計用のCADを選ぶ大事な基準が「用途」と「互換性」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
用途が「電気回路」なのか「電子回路」なのかにより、選ぶべきCADが変わってきます。
電気関係は建築設計と関連しているため、電気回路のみを目的としたCADはほとんどありません。そのため、電気回路向けとしては、汎用CADを選ぶのが無難でしょう。
ただし、汎用CADの中には電気機能が搭載されていないタイプもあることから、CAD選びの際にはよく機能を確認するようにしてください。なお、機械系CADが電気系CADに転用できることもあるので、あわせてチェックしてみると良いでしょう。
電子回路向けのCADには、「回路図設計用CAD」と「レイアウト用CAD」の2種類があります。
「回路図設計用CAD」とは、主に回路の接続情報を示すソフト。「レイアウト用CAD」とは、「回路図設計用CAD」で作成された情報を、プリント基板に落とし込むためのソフトです。電子回路向けCADを選ぶ際には、事前に電子回路に適したソフトであるかどうかを確認するようにしましょう。
一つの回路図を完成させるまでの工程において、社外でのやり取りが必要となったり、他の専門家のチェックが必要になったりなど、複数の人たちが関わってきます。そのため、回路図データは多くの人たちと共有するもの、と考えておくべきでしょう。
データ共有の必要がある以上、CAD選びの際には、互換性の高さも大事なポイント。自分が選んだCADデータが、必ずしも他人のPCで開けるとは限らないという点を意識し、少しでも互換性の高いソフトを選ぶようにしましょう。
基板設計におすすめのCADを5種類ピックアップしました。それぞれの特徴を見ていきましょう。
回路図の編集ツールやPCB レイアウト、ライブラリ コンテンツ、コミュニティの要望等、様々な要素を採り入れて作られた多彩な機能を搭載したCAD。障害物を避ける形での回路図配線システム、自動で押しのけ配線を行えるシステムなども搭載されているなど、痒いところに手が届く便利機能がたくさんあります。
機能限定バージョンを無料でダウンロードできるので、まずはそちらで操作性をチェックして後、有料版の導入を検討してみましょう。
CISによるパーツ検索、部品のデータ管理、図によるデザインの比較などができるフリーソフト。広範な回路図入力機能を搭載した生産性の高いソフトなので、スピード重視でCADを使いこなしたい方に向いています。
ただし、こちらのソフトは海外製品であり、操作のため参照するホームページは外国語で構成されています。翻訳機能を使うことはできるものの、外国語やカタカナの専門用語に不慣れな方にとっては、使いこなせるようになるまでに、やや手こずるかも知れません。
無料ソフトなので、一度ダウンロードして試用してみてから、本格導入すべきかを検討したほうが良いでしょう。
スケマティック・エディタを通じ、回路図を無制限に作成できるフリーソフト。作成したデザインを3Dで再現することもできるので、平面イメージだけでは確認が不十分だった詳細部分についても、正確に確認することができるようになりました。
Kicadの公式ホームページにアクセスし、windowsやmacなどのシステム別でフリーダウンロードが可能。フリーソフトなので制作会社からのサポート等はありませんが、ライブラリをダウンロードできたり解説書が出版されたりしているので、独学でも操作法を十分に習得することができます。
個人が著作権を所有しているフリーソフトウエア。Gerber data出力を通じ、精度の高いプリント配線板の作成が可能です。
プリント配線板設計を行える機能や、編集の際にギャップ・クリアランスチェックを行える機能を搭載していることから、これまで手作業でアートワークデザインをしていた方にもおすすめ。PCBEの最新版は、フリーソフトで有名なベクターからダウンロードできます。
商用としてもフリーでダウンロード&使用ができるCAD。搭載している機能のレベルによっては有料になりますが、フリー版でも十分に商用利用価値があります。
基板設計や回路図作成の制限がないこと、ライブラリ作成が簡単なこと、PowerPointやExcelを操作する感覚で基板配線を設計できることなどが、DesignSpark PCBの特徴。熟練したプロはもとより、CAD初心者にもおすすめのフリーソフトです。
以上、基板設計図におけるCAD導入のメリットやソフトの選び方、おすすめのソフトなどをご紹介しました。
基板設計においてCADが大きく役立つことは間違いありませんが、初期設定を誤ると、より高い生産性が実現可能だったにも関わらず、生産性の最大値を得られなくなる可能性があります。
ここに言う初期設定とは、すなわちソフト選びのこと。やや手間や時間がかかったとしても、その後の経営効率・生産性の向上を見据え、専門業者と相談しながら完璧な初期設定を行うようおすすめします。
基板の設計、製造、実装の3つに対応するとともに、一貫した製品・サービスの提供と顧客満足向上を実現するISO9001と環境にも配慮したISO14001を取得している3社を紹介します(2021年7月時点)。
コスパを求めるなら
【主な対応基板】
その他の対応基板
放熱基板、銅インレイ基板、アルミ基板、リジットFPC、高周波基板、大型基板、セラミック基板、IVH基板、フレキシブル基板
実績を求めるなら
【主な対応基板】
その他の対応基板
リジットFPC、高周波基板、銅ペースト穴埋め基板、バンプ基板、IVH基板、フレキシブル基板、複合導体厚基板、薄物基板
【選定基準】基板の設計、製造、実装の3つに対応するとともに、一貫した製品・サービスの提供と顧客満足向上を実現するISO9001と環境にも配慮したISO14001を取得している3社を紹介します。